
そこには斑模様のイモムシが浮いていた。
調べてみると、どうやらヒロオビトンボエダシャクというイモムシらしい。
樹の下に細い糸でぶら下がり、まるで宙に浮いているようだった。
日頃は樹上にて生活し、のんびりと葉っぱを食べているのだが、鳥などの天敵に襲われそうになると
葉っぱから飛び降りるという退避行動をする。
そのまま地面まで落ちてしまうと、蟻や他の昆虫の餌食になってしまうので、地面ギリギリで止まるのである。
まるでバンジージャンプようだな。。。
それにしても落下しながら地面に激突しないよう上手く調整する技術は感心するものがある。
しばらくすると、ずっとぶら下がっている訳にもいかないのか登り始めた。
まるで急坂をママチャリで登るが如く、右へ左へと身体をこねくりながら、ちょっとづつ、ちょっとづつ糸を手繰り寄せ登って行った。

15分程でなんとか樹上に戻れたが、よくよく考えると、なかなか大変である。
1年ほどの寿命の昆虫と、80年ほど生きると仮定した人間とでは、人にとっての15分でも虫にとっては1200分。
朝の4時にバンジージャンプして、ロープを手繰り寄せ、ジャンプ台に戻る頃には次の日になっている計算である。
それでも生きてこそと思うと【逃げる】という行動の大切さに気付かせてくれる。
社会では、逃げずに立ち向かうということが美徳とされ、なかなか逃げるという判断がしづらいのも事実である。
これは仏教のお話なのですが、
仏陀は、「一の矢を受けても、二の矢は受けない」と説いています。
一の矢というのは、事故、病気、他者からの攻撃など、避けられないものであり、
二の矢はその事実に対して、「働けなくなったらどうしよう」「嫌われたらどうしよう」「恥をかいたらどうしよう」と、自身の心が生み出す不安や苦痛とされています。
主な人間の苦痛は一の矢ではなく、増幅された二の矢によるものだと言われております。
「逃げたらかっこ悪い」という二の矢により、適正な判断が出来ず心を壊してしまう時もある。
このイモムシのように、逃げるべき時は逃げ、
向かうべき正しい道を覚悟を持って淡々と登ってゆきたいですね。