サマーカットとは

カッティングの道具
サマーカットとは、バリカンを使って体の一部分や全体の毛を刈り、スタイリングすることです。

トリミングのひとつであり、一般的に『涼しさを求めて毛を短くするカット』全般を指します。家庭でも行うことができますが、トリミングサロンや動物病院で行うケースが多いでしょう。

サマーカットの必要性については意見がわかれる

サマーカットを施された猫は、見るからに涼し気ですし、カット方法によっては、とてもユーモラスでかわいい姿になります。

ただ、毛づくろいを日課とする猫にとってのストレスや、被毛の役割を考えたとき、「ほんとうに必要なのか」という意見も聞こえてきます。

サマーカットについての正しい知識を得たうえで、飼い主として愛猫の幸せを考え、慎重に判断することが大切です。

サマーカットのメリットデメリットについて詳しく紹介します。

猫にサマーカットをするメリット

サマーカットした猫
まずはサマーカットを行う理由であり、メリットについてご紹介します。

暑さ・熱中症対策

自分にとって快適な場所を見つけたり、体温調節をしたりすることが得意な猫ですが、気温が体温より高くなってしまうと、うまく体温調節ができずに熱中症になってしまう危険性があります。

日中室内で留守番をさせる際、室内の気温が高くなっても猫には逃げ場がありません。とくに長毛種の猫の場合、毛を短くすることで少しでも涼しくしてあげたい、と考える飼い主さんも多いでしょう。

サマーカットをすれば通気性がよくなり、猫の体感的にも格段に涼しくなります。

掃除・お手入れがラクになる

日々の抜け毛の掃除には手間がかかります。被毛が衣服やソファにつき、「とってもとってもキリがない!」と感じている方も多いのではないでしょうか。サマーカットをすることで、こうした抜け毛の処理がしやすくなるというメリットがあります。

また、被毛が短くなることで毛玉もできにくくなり、ブラッシングもしやすくなります。

皮膚病の予防になる

湿気が多い夏は、猫の皮膚炎の発症リスクも高まります。とくに長毛種の猫は毛が密に生えているため毛玉ができやすく、肌も蒸れやすい傾向にあります。サマーカットで毛玉ができるのを防げば、肌の通気性がよくなり、皮膚病の予防になります。

また、皮膚の状態が目に見えやすくなることで、皮膚の異常にもすぐに気づいてケアしてあげることができるでしょう。

短毛種のサマーカットもある?

短毛種の猫でも皮膚病にかかりやすい子や抜け毛が気になる場合はサマーカットをする場合があります。

ただし、毛の長さに関わらず、サマーカットをするかどうかは安易に判断せず、獣医やトリマーなどの専門家に一度相談したうえで、猫種や性格を踏まえて行うようにしましょう。

猫にサマーカットをするデメリット

サマーカットされた猫
毛が短くなることでリスクを抱える側面もあります。サマーカットのデメリットについても紹介します。

日光性皮膚炎になる

毛を短く刈ることで、直射日光が皮膚にあたることは、猫にとって決していいことではありません。紫外線の影響で皮膚が炎症を起こす『日光性皮膚炎』になってしまうリスクがあるのです。最初は皮膚が赤くなったり、フケが出たりする程度ですが、悪化すると腫れ上がり、脱毛や皮膚の硬化を引き起こすこともあります。さらに、放置しておくと扁平上皮ガンのへと進行してしまう可能性もあるので、油断はできません。

猫にストレスがかかる

サマーカットをするために長時間拘束されたり、バリカンを当てられたりすることは、猫にとって強いストレスになる恐れがあります。暴れることが予想される場合は、麻酔をかけてサマーカットを行うケースもあり、麻酔のために血液検査を行うことも合わせて考えると猫へのストレスだけでなく費用も想定以上になってしまうことがあるようです。

毛が生えそろわないことがある

急に毛が短くなったことに不安を感じ、カットした部分の皮膚を頻繁になめて過剰に毛づくろいをしようとする猫がいます。すると、伸びかけ・生えかけの毛が切れてしまい、毛がきれいに生えそろわない場合があります。一般的にサマーカットを行った猫の毛が生えそろうまでには半年から1年近くかかるといわれています。

皮膚が傷つく可能性がある

猫の舌はひっかくこともできるほどザラザラしています。毛が短くなっても同じ強さでなめ続けたり、被毛の様子が違うことで、違和感から過剰に毛づくろいをしたりすることで皮膚が傷つき、炎症を引き起こしてしまう可能性があります。

猫のサマーカット、おすすめは?

カットされた猫
以上のように、メリットデメリットの両面をもつサマーカットですが、猫の性格や生活環境によって向き不向きがあるということで、とくに問題なく毎年カットをしているという子もいます。

では、どのようなカット方法があるのでしょうか。デメリットであげたようなリスクを減らすために、必要な場所を必要な分だけカットする、という方法もあります。

サマーカットの代表的なカット ライオンカット

ライオンカットした猫
顔周りと尾の先端を残して、体の毛だけを短くカットする方法は『ライオンカット』と呼ばれ、代表的なサマーカットのひとつとなっています。

肉球の間や肛門まわりなどを部分的にカット 

長毛種の猫の場合、肉球の間にも毛が伸びます。足裏まで伸びた毛は、フローリングの床などで滑りやすくなり、走っているときに転倒の危険性があるだけでなく、キャットタワーなど高い場所からうまく着地できずに腰を痛めてしまう可能性があります。愛猫のケガのリスクを減らすためにも。ここはカットしてもよさそうです。

また、肛門周りの毛は排泄蚋がついて病気の原因になったり、猫のストレスになったりします。短くカットすることで日々の掃除の負担を減らすこともできますよ。

毛玉のみをカット

長毛種の猫の場合、首回りや脇の下、お尻、胸やお腹、耳の後ろなど毛玉になりやすい部分の毛のみをカットすることがあります。また、一般的なサマーカットではバリカンを使って皮膚が見える程度の短さにしますが、皮膚の露出に不安がある場合は、ハサミを使って毛玉ができやすい部分の毛を軽くして、お手入れをしやすくするだけという方法もあります。

猫の毛の役割

くつろぐ猫
サマーカットをする際には、かかりつけの獣医師などの専門家に一度相談をすることをおすすめします。理由は猫の毛にはさまざまな役割があり、サマーカットをするかしないかの判断は、愛猫の性格や特徴、状態を考慮して行うことが望ましいからです。

ここでは、猫の毛の役割について解説します。

皮膚の保護

猫の皮膚は人間より乾燥しやすいと言われています。体全体を覆う被毛は、皮膚の保湿とバリア機能のために役立っているのです。

愛猫の居住空間における気温や湿度によっても、サマーカットをすべきか否かも変わってくるでしょう。

体温調節

猫の毛は、季節によって夏毛と冬毛で生え変わることで体温調節をしています。また、猫の毛と皮膚との間には空気の層があり暑さを防ぐ断熱材のような役割を果たしています。寒いときには体から熱を逃がさず、保温をする効果もあります。

室内でも直射日光のよくあたるところにいると、短くなった被毛は直接暑さを吸収してしまいます。逆にエアコンが効き過ぎている部屋では、体を冷やし過ぎてしまうでしょう。

快適になると考えて行ったサマーカットが、逆に体温調整をしにくくなる結果になってしまうことも考えられるのです。室内の環境には十分気を配らなくてはなりません。場合によっては服を着せるなどの対策も必要です。

クッション

体をぶつけたときや、爪や牙などで簡単に致命傷となる傷とならないよう、猫の毛はラッシュガードのように外傷から皮膚を守ったり、クッションのように衝撃を吸収したりするなどの役割があります。

サマーカットをした際は、室内の安全管理により気を付けてあげましょう。

先輩飼い主に聞いた 愛猫をサマーカットにした理由

ブラッシングされる猫
サマーカットには、メリットとデメリットがあることをご紹介しましたが、カットをした結果どうだったのかも気になるところですよね。実際に愛猫にサマーカットをしたという飼い主さんに、カットをした理由と猫の反応について聞いてみました。

被毛ケアのためにカットするも大暴れして……

【長毛の雑種 6歳の飼い主さんの場合】

長年蓄積してしまった毛の塊が全然ほぐせず、ブラッシングしようとしても嫌がるという悪循環だったので、トリマーさんにカットをお願いしました。

カット時はとても嫌がり暴れ、予定した通りまでにはカットできませんでしが、そこまで過敏な反応はしていませんでした。若干違和感を感じている様子で、切ない顔はしていましたが……。

カット後、元に生え揃うまでは8〜10カ月ほどかかりました。元々はキジトラっぽい感じだったのですが生えてからは黒が多くなった印象があります。

悩みだった毛の塊は、ブラッシングもこまめにやってたのもありますが、全然絡まることがなくなり、綺麗な状態を保ててるのでそれはとても良かったと思っています。」
▼カット後にしょんぼりしている様子
サマーカットにされた猫

皮膚疾患のケアのためにライオンカットに

【チンチラペルシャ 9歳の飼い主さんの場合】

ブラッシングするもほぐせない・嫌がる(痛がる)のに加え、ダマになっていた部分が汗疹のような皮膚疾患にまで繋がっていたため、トリミング施設が併設されている動物病院でライオンカットをしてもらいました

カット後はエリザベスカラー+塗り薬のコンボもあり皮膚もすっかり良くなりました。

長毛種は絡まってしまうとカットしないと逆に可哀想になる……という印象があります。」

まとめ

ブラッシングされる猫
本来は猫の健康のために行うサマーカットですが、見た目のかわいさや手軽さをだけを優先するとリスクをともないます。愛猫の特徴や性格、住環境などを踏まえて慎重に判断しましょう。

実際に行う前に、サマーカットが愛猫にとって本当に必要なのかを考え、獣医師などに相談することをおすすめします。