猫の爪切りは必要? 切らないとどうなるの?

爪とぎをする猫
結論からお話すると、猫に爪切りは必要です
爪切りをしないとどんどん爪が伸びていき、家具や床を傷つけるだけでなく、伸びすぎた爪が肉球に刺さったり、何かが爪に引っかかったりすることで、猫自身がケガをしてしまうおそれがあるのです。

「爪とぎ」と「爪切り」の違いって?

猫にとっての爪とぎは、お手入れやマーキング、ストレス解消の意味があります。
爪の表面の古くなった層を剥がして新しい爪に整えたり、肉球から出る自分のにおいの皮脂をこすりつけたり、暇つぶしや気分転換だったりと、爪とぎによって体と心を整えているのです。

一方、爪切りは、鋭くなった爪を丸く、短くすることが目的です
長く伸びた爪は猫にとっても、一緒に暮らす家族にとっても危険なもの。お互いが安全に暮らすために必要なのが、猫の爪切りです。

猫の爪切りをしないとどうなる?

爪が折れる

伸びすぎた爪が布やカーペットなどに引っかかったまま強く動かしてしまうと、爪が根元から折れて出血します。そのまま放置すると、傷口から雑菌が入って化膿してしまうことも。

巻き爪になる

猫の爪は伸び続ける特性があり、そのままにしておくと、爪はカーブに沿って丸く曲がって伸びます。爪が肉球に刺さるほど伸びてしまうと、最悪の場合は肉球に食い込んで感染を起こしたり、壊死してしまったりするケースもあります。 

病気に感染する可能性がある

猫が保有している常在菌に「バルトネラ菌」があります。
猫に引っ掻かれた際、人にバルトネラ菌が感染し、さまざまな症状を引き起こすのが「猫ひっかき病」です。
猫ひっかき病にかかると、傷跡の腫れ、リンパ節の腫れ、発熱と全身の痛みなどの症状を引き起こし、脳症に至るケースもあります。

猫の保有する常在菌のうち、人に感染するものとして、もう一つ「パスツレラ菌」があります。
この菌が引き起こす病気をパスツレラ症と呼び、軽度から重度の呼吸器疾患や、皮膚科疾患では発赤、腫れ、激痛を引き起こし、重症化すると敗血症にまで進むケースもあります。
また、パスツレラ菌は猫同士のけんかでも、傷を重症化させることがあります。

猫の鋭い爪は、人や猫にケガをさせ、場合によっては取り返しのつかないほど重い傷を負う場合もあります。家族や同居猫の安全と健康を守るためにも、爪切りは定期的におこないましょう。

猫の爪切りの頻度は?

爪が尖った猫

子猫の場合

子猫の爪は、成猫に比べて伸びるのが早く、成長するに従って爪は長く、硬くなっていきます。
爪切りに慣らすためにも、1週間に1回は爪先をチェックする習慣をつけ、伸びた部分をカットしてあげましょう。

子猫の爪は薄くやわらかいため、爪切りを使う際は力を入れすぎず、子猫が爪切りを嫌いにならないように無理なく丁寧におこなってあげてください。

成猫の場合

爪の成分のほとんどは、ケラチンというタンパク質です。
猫は肉食でタンパク質の摂取量が多く、十分な量のキャットフードを取っていて室内飼育をされている子なら、爪がすり減る機会は少ないため爪は伸びていく一方です。

成猫は、2週間に1回くらいのタイミングで爪をチェックして、伸びていたら切ってあげましょう。

爪を切る目安はさまざま

高野 航平

爪切りのタイミングは、以下のような状態を目安とするとよいでしょう。
・フローリングに爪が当たってカチャカチャと音が鳴るとき
・爪先がカーブして尖っているとき
・触って痛いとき

猫の爪の切り方 3ステップ

猫の爪切り

そもそも猫の爪ってどうなっているの?

猫の爪
猫の爪の構造は、たとえると玉ねぎのような構造で、層が重なっています。
一番内側が新しくやわらかく、外側になるほど硬く鋭くなっていき、一番外側は古く、摩耗していることもあります。
古くなった外側の爪を剥がし、尖った新しい爪と入れ替えるのが、猫の爪とぎ。
飼い主さんがおこなう爪切りでは、内側の新しく鋭い爪の先をカットすることが大切です。

爪の中の一番内側で、透けて見えるピンク色の部分を「クイック」といいます。クイックには血管や神経が通っていて、誤って切ると出血し、猫にも痛い思いをさせてしまいます。
爪が黒い猫だとクイックが見えにくいため、どこまで切ってよいか分からないことも多いですが、傷つけないように注意して、クイックから2mmほど離れたポイントを切ってください。

用意するもの

猫用の爪切り

猫の爪を切るための道具は、ハサミ型、ニッパー型、ギロチン型、電動やすりなどいろいろな種類があります。
はじめて猫の爪を切る飼い主さんは、ハサミ型やニッパー型など、日ごろから使い慣れている文具や工具と同じ形のものが扱いやすいでしょう。
子猫や爪のやわらかい猫はハサミ型が切りやすく、成猫のしっかりとした硬い爪にはニッパー型がおすすめです。

止血剤

猫の爪は透明なので、血管が通っているクイックを確認しながら切ることができます。
それでも、飼い主さんも猫も爪切りに慣れていないうちは、誤って深く切りすぎないか心配ですよね。そんな場合は、止血剤を用意しましょう
万一、切りすぎて血が出てきたとき、止血剤を塗り付けると、傷口を固めて出血を止めてくれます。

リラックスさせるためのアイテム

猫がリラックスした状態で爪切りができるように、以下のようなものを用意しておくとよいでしょう。
  • 全身を包んであげるためのバスタオルやブランケット
  • 安全に爪切りをするための洗濯ネット
  • ご褒美のおやつ

ステップ1.猫がリラックスできる環境をつくる

愛猫が爪切りを嫌いにならないよう、まずはリラックスして受け入れてもらえるように環境を整えましょう。いつも寝そべっている日当たりのいい場所や温かい場所など、猫のお気に入りの場所でおこなうようにします。
タイミングとしては、猫が寝ているとき、食後などにくつろいでいるときに、静かにはじめるのがいいでしょう。

ステップ2.後ろ足の爪から切る

猫の爪切りのやり方
爪を切るときは、猫の視界に入りにくい、後ろ足から切りはじめます。
飼い主が何をしているのかが猫から見えにくいため、抵抗感を減らすことができます。

また、後ろ足の爪先は、高いところへジャンプしたり、走ったりするときに力が入るため、前足に比べて爪が伸びにくい猫が多いようです。
後ろ足の爪先を切るときは、肉球部分と足の甲の部分を軽くはさみ、出てきた爪の先だけをちょこんと切ってください。深爪にならないよう、慎重におこないましょう。

ステップ3.前足の爪を切る

猫の爪を切る方法
前足の爪切りは、飼い主の動作が猫の視界に入るので、無理をするとすぐに嫌がられてしまいます。
まずは前足の肉球と足の甲の部分をそっとはさんで爪を出し、爪先だけを切っていきます。
このとき、やさしい声かけで褒めたり撫でたりして、リラックスさせてあげてください。

嫌そうな様子を見せたら、ご家族などに応援を頼んで、おやつをあげてもらいましょう。
おいしいおやつに気を取られているうちに、手早く終わらせてしまうのがコツです。

猫が暴れるなどして、全部の爪を切れなかったとき、飼い主としては気になってしまいますが、無理強いはしないようにしてください。
猫の心に「爪切り=不快」という印象がつかないよう、早めに切り上げてあげましょう。

出血したらまずは止血を

高野 航平

爪切りをしていて、出血してしまうと猫ちゃんも痛いですし、飼い主さんも驚きますよね。しっかりと出血している部分を抑えて止血し、止まっていればそのまま様子を見ても構いません。

出血が止まらない、数日たって猫ちゃんが気にしている(痛がっている)、指が腫れてきたといった場合は速やかに受診しましょう。

獣医師に聞いた! 猫の爪切りについてのQ&A

爪切りをしようとすると嫌がって暴れてしまい切れそうにない……。対処法は?
無理に自宅で爪切りをしようとすると、猫ちゃんと飼い主さん両方がケガをしてしまうだけでなく、お互いの信頼関係が崩れる可能性もあります。
猫ちゃんが暴れて爪切りできない場合は、無理をせず動物病院で定期的に切ってもらいましょう。爪切りが終わったらおやつやご褒美をあげて、爪切りに対してポジティブな印象を与えてあげるとよいですね。
猫の爪を切るとき、人間用の爪切りは使ってもいい?
人間用の爪切りも使えなくはないですが、幅が広いことや湾曲した形をしているため、猫ちゃんの細い爪を切るには適していません。
また、猫ちゃんの爪に力がかかってしまい、爪切りを嫌いになってしまう可能性もあります。
爪とぎをあまりしない猫や老猫の爪を切るときの注意点は?
猫ちゃんの爪は、古くなった外側の層が剥がれて新しい層が出てきます。そのため、爪とぎをあまりしない子や、足腰が弱まって爪とぎをしなくなった老猫ちゃんは、爪が伸びたままになってどんどん分厚くなっていきます。さらに、伸ばしたままにしておくと巻き爪になって肉球に食い込んでしまいます。

トラブルを防ぐためにも、1カ月に1回程度は爪のチェックをしましょう。
爪を切りすぎて出血してしまい、それ以降猫が爪切りを嫌がるように。 また爪切りをするには?
一度痛い思いや怖い思いをした場合、克服するのは簡単なことではありません。少しずつ時間をかけて、まずは指先を触らせてくれることからはじめるとよいでしょう。

うまくおやつを使いながら、指先→足全体→爪切りの体制→無理せず1本ずつ切るというように、少しずつステップを踏んでいくことが大切です。どうしても難しい場合は、無理をせず動物病院にお願いしましょう。

獣医師からのメッセージ

高野 航平

ブラッシングと同様に、爪切りは猫ちゃんにとって大切なケアの一つです。
爪切りが苦手な猫ちゃんはとても多いため、小さいころから、手を触られることや爪切りに慣れてもらうとスムーズにおこないやすくなります。ご褒美を上手に使うとよいでしょう。

こまめにケアすることで、小さな変化にも気付いてあげることができます。適切なケアで、猫ちゃんとの快適ライフを楽しみましょう。

まとめ

飼い主と猫の手
猫の爪切りをしないと、爪が伸びすぎてしまい、猫も人もケガをする場合があります。
そうならないために、飼い主さんが愛猫の爪を定期的にチェックして、必要なときにはきちんとケアできるようにしましょう。
また、猫の足先は敏感で、乱暴に触られたり、しつこくいじられたりすると嫌われてしまいます。今回ご紹介した3つのステップを覚えて、やさしく手早く爪切りを終えてあげてくださいね。