猫が食べてはいけないもの~野菜~

ねぎ類

ねぎ類(玉ねぎ、長ねぎ、ニンニク、ニラ)

ねぎ類には、アリルプロピルジスルフィドという、赤血球を破壊する成分が含まれています。猫が口にしてしまうと、貧血や下痢、嘔吐などの症状を引き起こし、最悪死に至ることもあるため危険です。

中毒の目安は、玉ねぎは1/4、長ねぎは1/3、らっきょうは1粒程度です。ただし、個体差があります。

また、ねぎ類は加熱しても中毒症状を引き起こすため、ハンバーグやシチューなどねぎ類が含まれる料理も与えないでください。

春菊、ほうれん草

春菊とほうれん草は、体によい栄養素が多く含まれていますが、シュウ酸という成分が含まれているので注意してください。
猫がシュウ酸を摂取しすぎると、シュウ酸カルシウム結石を引き起こすおそれがあり、頻尿や尿閉(尿が出なくなること)、血尿などが症状として表れます。
とくに、泌尿器系に不安がある猫には、春菊とほうれん草を与えないことをおすすめします。

ユリ根

ユリ科の植物は、もっとも危険な食べ物の一つです。猫がユリ根を食べてしまうと、急性腎不全を引き起こし、命に関わることもあるため危険です。

猫にとっては猛毒なので、ユリ根やユリ科の植物を家に置いておかないほうがよいでしょう。
ユリ中毒は、摂取して1〜3時間で症状が発症し、2日間程度で障害をもたらすこともあるため、注意が必要です。

猫が食べてはいけないもの~果物~

ブドウ

ブドウ・レーズン

ブドウやレーズンを猫が食べると、下痢や嘔吐などの中毒症状を引き起こす可能性があります。中毒をもたらす成分については、はっきりとわかっていません。

中毒になる量の目安は、粒の大きいブドウで1粒程度、レーズンは15粒程度といわれていますが、個体差があるため食べさせないようにするのが安心です。

また、レーズンは多量の砂糖や酒で漬け込んでいるため、糖尿病のリスクもあります。レーズンパンやフルーツグラノーラなども猫に与えないようにしましょう。

イチジク

イチジクのフィカインとフラノマクリンという成分は、猫にとって有害です。

フィカインは、タンパク質を分解する酵素が含まれており、口の粘膜を傷つけてしまいます。
フラノクマリンは、中毒性をもった有機化合物を含んでいます。イチジクの果肉や皮を触ったあとに日光に当たると、皮膚炎を起こしてしまう成分です。

猫がイチジクを食べると、口や皮膚に炎症が起きたり、よだれ、下痢、嘔吐などの症状が表れたりします。

アボカド

アボカドにはペルシンという成分が含まれており、猫が口にすると有毒です。少量でも呼吸困難になるほど危険なので、誤って食べないようにしてください。

しかし、原材料にアボカドが含まれているキャットフードも存在しています。実は、アボカドの品種は1000種類以上あり、国によって流通している品種が異なるのです。
日本で多く販売されているアボカドはペルシンの含有量が多く、猫にとって危険です。一方、アメリカ産のキャットフードに含まれているアボカドはペルシンが少なく、加工時に無毒化の工夫をしていると考えられます。

猫が食べてはいけないもの~魚介類~

かつおぶし

生のエビ・カニなどの甲殻類

生のエビとカニなどの甲殻類にはチアミナーゼが含まれているため、猫に与えるのはやめましょう。
チアミナーゼは、ビタミンB1を破壊してしまいます。猫がビタミンB1欠乏症になると、けいれんや嘔吐、歩行障害を引き起こし、最悪死に至ることもあるので危険です。

チアミナーゼは加熱すると効力を失いますが、甲殻類は消化不良になりやすいため、猫に与えすぎないように注意が必要です。

生のイカ・タコ

生のイカやタコもチアミナーゼが含まれています。「猫にイカをあげると腰を抜かす」といわれているのは、ビタミンB1欠乏症で歩行不全になるためです。
イカやタコを加熱しても、弾力があるため、喉や消化器などを詰まらせてしまう危険性があります。

また、イカを加工したスルメを猫に食べさせると、唾液や胃液で膨らむことで胃腸に大きな負担をかけるため、与えないようにしましょう。

青魚

アジやサバなどの青魚には、EPAやDHCなどの不飽和脂肪酸が多く含まれています。不飽和脂肪酸は、体内のビタミンEを消費してしまう成分です。
青魚を過剰に摂取するとビタミンEが不足し、筋肉の低下や免疫系の異常を招いてしまいます。

さらに、不飽和脂肪酸は体内の脂肪を酸化させ、黄色脂肪症(イエローファット)を引き起こす可能性があるため要注意です。黄色脂肪症になると、体の脂肪が黄色く硬くなり炎症が起こります。
猫に青魚を過剰に与えないようにしましょう。

まぐろ

生のまぐろには、ビタミンB1を破壊するチアミナーゼが含まれているので、猫にまぐろを与えるときは、少量もしくは加熱してください。
不飽和脂肪酸を多く含むため、食べ過ぎると黄色脂肪症(イエローファット)になる危険もあります。

また、新鮮ではないまぐろを与えると、ヒスタミン中毒になることもあります。猫にまぐろを食べさせるときは、新鮮かどうか、必ず確認しましょう。

かつおぶし

かつおぶしは、ミネラルが多く含まれています。過剰摂取するとpHのバランスが崩れ、尿路結石の発生や腎臓の負担などのリスクが高まります。
かつおぶしが好きな猫は多くいますが、継続的に与えないようにしましょう。

かつおぶしを与えたいときは、塩分量調節された猫用を選ぶのもおすすめです。

貝類

貝類で猫に絶対に与えてはいけないのが、アワビやトコブシなどのミミガイ科、サザエをはじめとするサザエ科です。

貝類を猫に与えると、ピロフェオホルバイドという成分が日光に反応し、皮膚に炎症を引き起こします。とくに、猫の耳は被毛が薄いため日光の影響を受けやすく、症状が重くなると耳が壊死してしまうこともあります。
「猫は貝を食べると耳が落ちる」といわれているのは、このような理由からです。

ホタテは、貝柱とヒモ以外の部位を与えてはいけません。ほかの貝類もチアミナーゼが含まれているため、生で与えないようにしましょう。

猫が食べてはいけないもの~動物性食品~

牛乳

生肉

生肉は中毒を引き起こすサルモネラ菌や大腸菌などがあるため、猫に与えないようにしましょう。一般的にスーパーで売られている牛肉、豚肉、鶏肉などは加熱することを前提に販売されています。

食中毒の症状は、腹痛や嘔吐、下痢などです。猫に肉を与えるときは、必ず加熱してください。

レバー

レバーは、貧血を予防したり免疫を高めたりする効果がありますが、与え方に注意が必要です。

レバーはビタミンAが多く含まれています。猫に与えすぎるとビタミンAが体内に蓄積してしまうので、与える量に注意してください。ビタミンA過剰症は、嘔吐や下痢などを引き起こします。
レバーを与える際は必ず加熱し、多くても1週間に1回程度、少量をあげるようにしましょう。

ハム・ソーセージ

ハムやソーセージは塩分と脂質が多く、添加物も含まれているので、猫に与えないようにしましょう。過剰な塩分摂取は、健康を害する可能性が高いため危険です。
また、脂質の高いロースハムなどは、猫の肥満につながる場合もあります。

牛乳

牛乳には、乳糖(ラクトース)という糖が含まれています。猫は、この乳糖を分解するラクターゼという酵素が活発ではなく、うまく消化吸収できずに下痢をしてしまうことがあります。牛乳を温めたり冷やしたりしても乳糖は分解されません。

一方、下痢をすることが少ないといわれているのが、チーズです。
ただし、チーズはカルシウムの量が多くカロリーが高いので、尿路結石やカロリー過多になる可能性もあります。与えすぎないように気を付けてください。

生卵

猫に害がある成分は、卵の白身に多く含まれているアビシンです。
アビシンを多く摂取すると、ビオチンの吸収が阻害されて、ビオチン欠乏症を引き起こすおそれがあるため、猫に生卵は与えないようにしましょう。
ビオチン欠乏症の症状は、皮膚炎や脱毛症、神経異常などです。

ただし、アビシンは加熱すると不活性化するため、吸収阻害の心配がなくなります。卵を与える際は、加熱してから食べさせましょう。

鶏の骨

鶏の骨は、猫に与えないでください。とくに加熱調理した鶏の骨は、縦にさけやすく口や食道、胃腸などを傷つけてしまうおそれがあります。

鶏の骨を与えなくても、ゴミ箱に捨てた際に、猫がゴミをあさって食べてしまわないように注意してください。
鶏の骨が消化器に詰まり手術になった事例もあります。

猫が食べてはいけないもの~そのほかの危険物~

チョコレート

チョコレート、ココア

チョコレートの原料であるカカオには、カフェインだけでなくテオブロミンという成分が含まれています。このテオブロミンは、猫が口にすると中毒症状を引き起こす有害な成分です。

体重1kgあたりテオブロミン80mg程度で、中毒症状がみられるといわれています。カカオの含有量は商品ごとに異なるので、少量であっても危険です。

最悪、死に至ることもあるので、絶対に猫に与えないでください。

カフェインを含むもの

カフェインを含むものは、緑茶や紅茶、コーヒー、コーラなどです。カフェインは、猫にとって有害なので、絶対に与えないでください。
猫にカフェインを与えてしまうと、数時間程度で嘔吐や下痢、震え、不整脈などの症状がみられます。

カフェインを含む食品は、猫が届かない場所に置いたり、ふた付きの密閉容器に入れたりして保管するなど、対策してください。

アルコール

人はアルコールを分解する酵素をもっていますが、猫は体内でアルコールを分解する酵素をもっていません。

猫はアルコールが体内に残りやすく、ほんの少しの量でも内臓器官が機能低下するおそれがあります。眠ったまま亡くなっていたということもあるため危険です。
アルコールを摂取してしまった場合、30分〜1時間後に症状が出るといわれています。

スパイス(香辛料)

スパイスは刺激が強すぎて、猫の胃腸や肝臓、腎臓などの内臓に悪影響を及ぼします。スパイスを口にした猫の症状は、下痢や嘔吐などです。

なかには、カレーの匂いが好きな猫もいます。カレーはスパイスのほかにも、玉ねぎなどの猫にとって悪影響を与える食材も入っているので、絶対に与えないでください。

ナッツ類

ナッツは、脂質が多く消化不良や尿路結石、中毒症状を引き起こす可能性があるため与えてはいけません。

とくに、マカダミアナッツの場合は、口にしてすぐに症状が出ることもあるので注意してください。少量でも、死亡例があるため保管には注意が必要です。

キシリトールを配合したもの

猫はキシリトールを摂取すると、体内の血糖値が下がってしまいます。
猫が歯磨き粉やキシリトール入りのガムなどを口にしてしまうと、1時間以内で低血糖に陥ってしまうこともあるので注意しましょう。

症状は、けいれんや呼吸困難、歩行不全などです。大量に食べてしまうと、肝臓障害を起こし命に関わることもあります。

猫が中毒になっているときの症状

注射を打たれる猫

よだれ

猫が中毒になると、大量のよだれが出ることがあります。

嘔吐

嘔吐は、中毒の初期症状や別の病気に進行しているサインの可能性があります。

また、嘔吐した直後に水やフードを与えないようにしましょう。胃や腸にトラブルが起きているときに、水やフードを与えると刺激になり、再び吐いてしまうことがあります。

下痢

猫は、有害な食べ物を摂取した際も下痢をします。
猫が下痢をしトイレの回数が増えると、脱水や電解質のバランスが崩れることもあるため、注意してください。

また、動物病院で受診するときは、検便がおこなわれることもありますので、便を持参することをおすすめします。

元気消失

中毒の前兆や初期にみられるのが、元気消失です。
たとえば、レーズンやマカダミアナッツによる中毒で腹痛が起きて、元気がなくなります。

猫が元気消失したら、以下のような症状がみられます。
  • いつもは走ったり遊んだりしているのに、寝てばかりいる
  • ぐったりして動こうとしない
  • 暗いところに隠れている

愛猫にこのような症状がみられたら、体調が悪い可能性があります。ほかにも症状がないか観察しましょう。

けいれん

けいれんは、中毒症状が進行したときにみられます。

たとえば、以下の中毒症状が原因でけいれんを引き起こすことがあります。
  • ブドウ中毒で急性腎不全になったとき
  • キシリトール中毒で低血糖になったとき
  • カフェイン入りの飲み物やアルコールを過剰摂取したとき

貧血

ねぎ類に含まれるアリルプロピルジスルフィドという成分が、赤血球を破壊し貧血症状を引き起こします。

貧血とは、血液中のヘモグロビン濃度が薄まった状態のことです。ヘモグロビンには、体全体の組織に必要な酸素を運搬する役割があります。
貧血を起こすと体内の組織が正常に働けなくなり、命に関わる可能性もあるので注意しましょう。

血便

鶏の骨などにより腸が傷ついたときや、カフェインの摂取などで急性の消化器症状があるときに、血便が出ます。

血便には、鮮血が付着または混入している赤い血便と、鮮血が確認できない黒い血便の2種類があります。動物病院で診察するときは、便を持参しましょう。

中毒症状が表れるまでにかかる時間

猫の中毒症状は、一般的に24時間以内に出ることが多い傾向ですが、摂取した食べ物によっては、食べた食後や数日後ということもあります。

たとえば、チョコレート中毒の場合、一般的に1〜6時間後に中毒症状が表れることが多いです。一方で、ねぎやアボカドでは1〜5日以内と、発症までの時間が長いといわれています。

猫が中毒になっているときの対処法

寝ている猫

自宅での対処法

無理やり吐かせない

誤食や中毒に気が付いたとき「とりあえず吐かせよう」と思う方も少なくないと思いますが、無理やり吐かせるのは危険です。
獣医師に指示を受けることなく吐かせると、食べたものが気管を詰まらせてしまうおそれがあります。

命に関わる可能性もあるため、誤食や中毒症状に気が付いたら、すぐに動物病院に連絡しましょう。

何をどれくらい食べたか確認する

猫が食べてはいけないものを口にしてしまった場合、食べた量をなるべく確認してください。愛猫の体重と食べた量を比べることで、症状の度合いが判断できます。

獣医師に、猫が何をどのくらい食べたか、分かる範囲で伝えられるようにしましょう。

動物病院に連絡する

猫が誤食してしまったら、できるだけ早く動物病院に連絡しましょう。

獣医師に「いつ」「何を」「どのくらい」食べたのか分かる範囲で伝えます。中毒症状など気になる猫の様子があれば、写真や動画を撮っておくのもおすすめです。

病院でおこなわれる処置

催吐処置

猫が誤食してからあまり時間がたっていない場合や、胃の中に毒素が残っているときは、注射や薬を使って吐き戻しをさせます。

対症療法

誤食してから時間がたっており、体に毒素が回っている場合は、点滴で毒素の濃度を薄める処置をします。
毒素を吸着させる飲み薬を与えることもあります。

胃洗浄

催吐処理で胃の中の毒素を吐き戻せない場合や、毒素が致死量を達している場合は、胃洗浄します。
猫の状態や食べたものによって処置方法は異なります。

まとめ

診察をうける猫
猫が食べてはいけないもののなかには、少量でも口にすると危険なものがあるため、猫に与えてはいけない食べ物や成分を知っておくことは大切です。
万が一、食べてはいけないものを口にしてしまったら「いつ」「何を」「どのくらい食べたか」を獣医師に伝えられるようにしてください。また、キャットフード以外のものを与えるときは、十分に配慮し、異変が見られたらすぐに動物病院に相談しましょう。