猫の肥満度チェック

猫のBCSと体型
猫の肥満度をチェックする方法はご存知でしょうか。
「体重が重い=肥満」と考える人もいるかもしれませんが、標準体重は猫種によって異なるため、体重だけでの判断は難しいといえます。

猫の肥満度判断する方法として、猫の「ボディコンディションスコア(BCS)」があります。これはBCS1(痩せ)~BCS5(肥満)の5段階で肥満度をチェックするもので、中間のBC3(標準)が理想とされています。
BCSの判断基準は、外から肋骨や腰骨、骨盤が見えるか、背骨や肋骨に触れるか、腰のくびれがあるかなど。標準体型であるBC3は、「外から肋骨は見えないが、体に触れると容易に骨の存在を確認できる」状態です。

BC4(やや肥満)~BC5(肥満)になると、上から見てもくびれがない、肋骨に触るのが難しい、歩くと脂肪が揺れる、といった様子が見られます。
毛が長い長毛種など見た目での判断が難しい場合は、肋骨に触れられるかどうかを一つの判断基準にしましょう。
参考文献
環境省(飼い主のためのペットフード・ガイドライン)(https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/pamph/petfood_guide/pdf/8.pdf

猫の肥満の悪影響

受診中の肥満の猫

肥満が原因で引き起こされる病気

代表的なものは、循環器や泌尿器に関わる病気です。また、肥満猫が急激なダイエットをおこなうことで、肝臓機能を低下させる「脂肪肝」といった病気もあります。
さらに肥満による体重増加は全身に負担をかけることとなり、結果さまざまなケガが起こりやすくなります。

【肥満によりリスクが高まる病気、疾患】
  • 高血圧
  • 糖尿病
  • 心臓肥大
  • 拡張型心筋症
  • 脂肪肝
  • 関節炎
  • お手入れが行き届かないことによる皮膚トラブル
  • 体重増加によるケガ

麻酔のリスクが増す

脂肪がたっぷりついた状態の猫は、麻酔がかかりにくかったり、逆に覚めにくかったりすることがあります。
また、開腹手術などの大きな手術の際に、切開場所の出血が止まらずに危険な状態に……という怖いケースも起こりかねません。

いびきがうるさくなる

全身に脂肪を蓄えた猫は、首回りにも脂肪がついてしまいます。その影響で、気道が余分な肉によって圧迫され、寝ているときに「ガーガー」といびきをかくようになります。

大きないびきや、呼吸しづらそうにいびきをしている場合は、病気が隠れている可能性も。いつもと違う様子が見られたら注意が必要です。

猫の肥満の原因

ごはんを食べる肥満の猫
現代において、肥満猫の割合は増加傾向にあるといわれています。猫の体が省エネルギー型で太りやすいことも理由の一つですが、猫を取り巻く生活環境の変化にもさまざまな原因が潜んでいます。

カロリーオーバー

肥満の大きな原因の一つが、食べ過ぎによるカロリーオーバーです。
猫の祖先であるヤマネコは、狩りで自分の食べ物を確保していました。しかし、人のそばで生活する現代の猫は、食べ物に困ることもなく、食欲も旺盛です。与えられたフードを一気食い、さらにおやつもおねだり……というように、1日の摂取カロリー量をオーバーしてしまいます。

運動不足

飼い猫の場合、自分で狩りをおこなう必要はありません。飼い主から十分な食事を与えられ、安全な室内で一日寝て過ごすような猫は、運動不足に陥る可能性が高くなります。
また、成猫は成長期の子猫より摂取カロリー量は落ちますが、同時に運動意欲も低下するため、結果として太りやすくなります。

不妊・去勢手術

不妊手術、去勢手術を受けた猫はホルモンバランスの変化により、代謝が落ちたり食欲が旺盛になったりするため、太りやすくなるといわれています。

ストレス

引っ越しで大きな生活環境の変化があった、同居猫と折り合いが合わない、というような理由でストレスがたまり、過食に走ってしまうケースです。

室内飼いによる運動不足もストレスや肥満の原因になるため、猫に適切な運動をさせてストレスを解消する必要があります

猫の肥満対策

キャットタワーで遊ぶ猫
人間と同様、猫の場合も「食事のコントロール」と「適切な運動」が重要です。まずは目標体重を設定し、適切なダイエット方法で肥満対策をおこないましょう。

目標体重とダイエット計画の決め方

肥満対策のスタートは現状を知ることから。正しい体重を測定し、理想体重との差を割り出します。
適正体重は猫種によって異なるため、純血種の理想とされる体重を参考にします。愛猫が純血種の平均より大きい、あるいは小さい場合は猫の体格に応じた体重設定を設定しましょう。

目標体重を決めたら、次はダイエット計画です。無理のない健康的なダイエットでは、1週間で体重の1~1.5%ずつ落としていくのが理想です。
猫の体に大きな負担をかける急激なダイエットは、病気やストレス、リバウンドの原因になります。ダイエットは根気よくコツコツ続けましょう。

主なダイエット方法と注意点

ダイエットの基本は、「食事量(摂取カロリー)」と「運動量」のコントロールです。

食事のコントロール

肥満猫の場合、標準時に必要とされる食事量から減らして摂取カロリーを調節します。

成猫の場合は、1日に必要なカロリーは体重1キロにつき約65キロカロリーです。つまり体重6キロの場合、6×65=約390キロカロリーと計算できますが、ダイエット中はここから20~30%減らして計算します。

カロリー計算が難しい場合は、肥満猫用にカロリーバランスが調整された「ダイエットフード」を取り入れてみましょう。
ダイエットフードのなかには空腹感を満たすために食物繊維が含まれているものがあります。このようなフードを取り入れることで、ただ単にフードの量を減らすよりもダイエットによる猫のストレスが少なく済みます。

猫に必須な栄養素であるタンパク質、炭水化物、脂質の三大栄養素に加えて、ビタミン・ミネラルがバランスよく含まれるものが理想です。
「AAFCO(米国飼料検査官協会)の定める基準を満たしていることの証明」がパッケージに示されているものを選ぶのもいいでしょう。

適切な運動

ダイエット中は、食事のコントロールに加えて、適度な運動をさせることでカロリー消費を促しましょう。
猫はもともと運動量の少ない動物。なかなか動いてくれないときは、キャットタワーの上り下りや、猫じゃらしを使った上下左右の動き、ボールの追いかけっこというように、猫の本能を刺激するような方法を試してみてください。

運動が重要である一方、肥満猫にとって急な激しい動きは大きな負担です。ダイエット中の運動は関節を痛めてしまわないよう無理ない範囲でおこないましょう。
猫の場合、1回15分程度でも十分な運動量を確保できます。

まとめ

寝ている太り気味の猫
以上が猫の肥満のチェック方法と肥満対策の解説でした。
猫の健康維持に大切なのは、定期的な体型・体重のチェックと適切なダイエットです。
一度太ってしまった猫のダイエットは、一筋縄ではいきません。「若い時と比べて太ってきたかな?」と思ったら、食事量や運動といった日々の生活の見直しからはじめてみましょう。