猫の熱中症が疑われる症状

元気のない猫
熱中症は、高温多湿な環境に長時間いることで、高体温および脱水となって引き起こる病気です。
まずは、猫の熱中症でみられる初期症状から重度の症状まで紹介します。症状の重さに関わらず、熱中症が疑われるときは自己判断せず病院へ連れて行くことをおすすめします。

熱中症の初期症状・中期症状

熱中症の初期症状から中期症状を紹介します。次のような症状が猫にみられたら、熱中症を疑いましょう。

  • 元気や食欲がなくなる
  • 口を大きく開けてハアハアと呼吸している
  • よだれが多量に出ている
  • 下痢、嘔吐
  • ふらふらしてきちんと歩けていない
  • 震えている
  • 落ち着きがない
  • 心拍数の増加

猫は、基本的に鼻呼吸をおこないます。猫がハアハアと口を開けて呼吸しているときは、かなり体温が上がっている可能性があります。体が熱くないか確認してください。

重度の熱中症でみられる症状

次のような症状の場合、熱中症の重症化が考えられます。自宅でできる応急処置をしてすぐに動物病院へ連絡し、受診してください。

  • けいれんしている
  • 呼びかけても反応しない
  • 舌や歯茎が青紫色に変化している
  • ぐったりとして動かない

猫の熱中症の原因

窓の近くにいる猫
熱中症は真夏のイメージですが、5月ごろから熱中症になる猫もいます。ここでは、猫の熱中症の原因についてみていきましょう。

温度・湿度の高い部屋で留守番していた

飼い主が外出するときは、人間にとってそれほど暑くなくても、エアコンをつけて留守番させるようにしましょう。高温の部屋に閉じ込めてしまうと、熱中症を引き起こす可能性があります。
とくに晴れて日差しの強い日は、徐々に室内温度が上がっていくため要注意です。

湿度が高くても熱中症のリスクがあるため、湿度管理も忘れずにおこなってください。

水分補給ができていない

水を飲めていない状態が続くと、熱中症になりやすいので注意してください。
いつでも水分補給ができるように、複数水飲み場を設置するなど工夫しましょう。

閉め切った車やキャリーバッグの中で一定時間過ごしていた

車内やキャリーバッグの中は熱がこもります。
エンジンを切った車内は、窓から入る太陽光によって数分で温度が急激に上がり危険な状態です。「ほんの少しの時間だから大丈夫だろう」とエンジンを切った車内に猫を残すのは、絶対にやめましょう。

暑い日はもちろん、季節問わず熱中症のリスクがあるので気を付けてください。

押し入れや物陰にずっと隠れていた

猫は狭いところが好きな動物です。押し入れの中や物陰は風通しが悪く高温多湿な状態で、そこに水も飲まずに長時間いると熱中症の原因につながります。

猫がいることに気付かず、飼い主が扉を閉めてしまうことのないように注意してください。

猫に熱中症が疑われるときにできる応急処置

熱中症の疑いがある猫
猫に熱中症の症状が表れたらすぐに適切な応急処置を施すのが望ましいといわれています。ここでは、猫の熱中症の疑いがあるときにできる応急処置について解説します。

1.涼しい場所に移動させる

猫に熱中症の症状がみられたら、まずは涼しい場所に移動させてください。

室内や車内であれば、エアコンをつけたり風を送ったりしながら体を休ませます。移動中の場合は、日の当たらないところへ移動するなど、体温が上がらないように配慮しましょう。

2.濡れたタオルで体をくるむ

体温を下げるためには、濡れたタオルで全身を包んで体を冷やすのも効果的です。
同時に、扇風機などで風を送って熱気を逃がすのもよいでしょう。

3.保冷剤などで首・脇・手足の付け根を冷やす

猫も人間と同様に、首・脇の下・脚の付け根など太い血管のある部分を冷やすことで、体温が下がりやすくなります。
保冷剤を直接当てると凍傷になるおそれがあるため、タオルなどに包んで使用してください。

猫の体を冷やしすぎると、低体温の状態になることもあるため注意してください。体温が下がり続けると、震えて再び体温が上がることもあります。
直腸温が39℃になるのを目安にして処置しましょう。

4.水を飲ませる

意識がしっかりあるときや猫が水を飲めそうな様子であれば、水を少しずつ飲ませます。水が飲めないときは、コットンなどに水を含ませて口を湿らせてあげてください。

ただし、無理やり飲ませると窒息したり誤嚥をしたりする可能性もあるので、無理に飲ませないように注意しましょう。

猫が熱中症になったら後遺症は残る?

獣医師と子猫
猫が重度の熱中症の場合、血液循環の悪化により各臓器に十分な血液が行き渡らず後遺症が残ってしまうリスクもあります。
腎臓障害や脳障害などを引き起こし、熱中症が治っても継続的に治療が必要になることも。

また、応急処置で一時的に回復しても、臓器にダメージを受け翌日以降に急変する可能性もあります。熱中症の症状が疑われる際は、迷わず動物病院に連れて行きましょう。

猫の熱中症対策や予防法

水分補給している猫

猫にとって快適な温度・湿度は?

個体差はありますが、猫が快適に感じるのは、温度が25℃前後湿度が50〜60%程度といわれています。

エアコンや扇風機、サーキュレーターなどを使って、適切な温度と湿度を保てるようにしましょう。ただし、エアコンの冷風が直接猫に当たると体が冷えすぎてしまうこともあるので、風向きに注意してください。

また、日差しが強い日はカーテンやすだれなどで直射日光を防ぎ、室温が上がらないように対策するのが効果的です。
猫の様子を見ながらエアコンの設定温度など変更し、部屋の温度を調整するようにしましょう。
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室内環境を整える

ケージやベッド、水飲み器の置き場所

室内でも日光に当たり続けると熱中症の原因につながります。ケージやベッド、水飲み器などは、直射日光の当たらない場所に設置しましょう。

とくに水飲み場が暑い場所にあると、猫が水を飲みにくくなり脱水症状になるおそれがあるので要注意。
ケージやベッドにひんやりグッズを使うのもおすすめです。

いつでも水分補給できるようにする

いくつか水飲み場を設置し、十分な水の量を飲める環境にするのも有効です。

飼い主が外出する際は、水飲み器をひっくり返すといったトラブルが起こる可能性もあるので、複数配置しておくと安心です。
留守番させるときは、飲み水の残量を確認してから出かけましょう。

部屋を自由に出入りできるようにする

猫は快適な場所を見つけるのが上手です。一つの部屋に閉じ込めてしまうと暑さからも寒さからも逃げられないため、猫が家の中を自由に出入りできるようにしましょう。

留守番させるときはドアを開放しておきます。
危ない場所や入ってほしくない部屋はドアを閉めておいたり、ドアストッパーを使ったりするなど、安全対策も忘れずにおこなってください。

ブラッシングで冬毛を取り除く

毛量の多い猫はブラッシングでアンダーコート(下毛)を取り除くのも熱中症予防につながります。冬毛を取り除くことで通気性がよくなり、熱がこもるのを防ぎます。

とくに長毛でボリュームのある被毛を持つ猫は、日々のブラッシングを怠らないようにしてください。

お出かけ時の暑さ対策

お出かけ時は、キャリーバッグの中が高温にならないように工夫が必要です。
通気性のよいタイプを選んだり、タオルなどで包んだ保冷剤やひんやりグッズを入れたりするとよいでしょう。

車に乗せるときは、直射日光が当たらないように対策をします。こまめな水分補給も忘れずに。

猫の熱中症対策グッズ

エアコンの部屋にいる猫

ひんやりグッズ

冷感マット

冷感マットは、暑い夏でも猫が快適に寝そべることのできるグッズです。
大理石やジェル、アルミなどさまざまなタイプがあり、ベッドやケージの中に敷けるものもあります。
ただし、ジェルシートは猫が噛んだり引っ掻いたりしても、中身が出てこないものを選んでください。

夏用ベッド

アルミやかご、接触冷感生地などさまざまな素材・形のベッドがあり、猫の大きさや好みに合わせて選ぶとよいでしょう。ひんやりタイプの「猫鍋」もおすすめです。

扇風機、サーキュレーター

扇風機やサーキュレーターは、部屋の空気を循環させるときに役立ちます。とくにエアコンと併用することで、効率よく部屋の温度を下げられます。

水分補給グッズ

ウェットタイプのフードやおやつ

猫がなかなか水を飲んでくれない場合もありますよね。そんなときは、ウェットフードや水分含有量の多いペーストタイプ・ゼリータイプのおやつを活用してみるのもおすすめです。

自動給水器

猫は流れる水に興味を示す傾向があります。水が常に流れている状態になっている自動給水器を使ってみるのもよいでしょう。
水が循環・ろ過されているため、いつもきれいな水を飲めるのもメリットの一つです。

注意して利用したいグッズ

保冷剤

かじったり引っ掻いたりすると、保冷剤の袋が破れてしまい危険です。保冷剤によっては、中毒を起こすおそれがある「エチレングリコール」が成分に含まれているものもあります。猫が誤飲しないように注意してください。

保冷剤を使用する際は、与えっぱなしにしないようにしましょう。

凍らせたペットボトル

ペットボトルを凍らせれば、ひんやりグッズになります。ただし、水は凍らせると膨張するので、破裂しないように水の量に気を付けてください。
冷凍専用のペットボトルを使うと安心です。

熱中症になりやすい猫

長毛種の猫

短頭種

ペルシャやエキゾチックショートヘア、ヒマラヤンなどの短頭種は骨格上、鼻がつぶれていて、呼吸がしづらいので注意が必要です。
呼吸によって体温調節するのが苦手なため、熱中症に陥りやすいといえます。

長毛種

原産国が寒冷地の猫種は、被毛が多く長毛なため暑さに弱い傾向です。たとえば、メインクーンやノルウェージャンフォレストキャットなどがあげられます。
高温多湿の日本の気候では熱がこもりやすいため、日ごろから対策をして熱中症に注意しましょう。

肥満気味の猫

肥満気味の猫は、皮下脂肪に熱がこもりやすく、脂肪が放熱を妨げてしまうため、熱中症のリスクが高くなります。
また、肥満の猫は、首回りの脂肪によって器官が圧迫され呼吸機能が低下しがちです。

呼吸器系や循環器系などに疾患のある猫

呼吸器系や循環器系など疾患がある猫は、体温の放出や呼吸をスムーズにおこなえないことで、熱中症の発症リスクが高まります。
手術直後など、自由に動けない猫は、熱中症にならないように気を配ってください。

子猫や高齢猫

子猫は、体が未成熟のため、体温調整がうまくできません。部屋の温度が冷えすぎてもよくないので、様子をみながら部屋の温度を調節してください。

高齢猫は体温調節機能が低下していることや、体力がないことから熱中症のリスクが高まります。動きも鈍いため、夏場長い時間ひなたぼっこしている場合は、体が熱くないか確認しましょう。

まとめ

寝ている猫
猫の熱中症は、命に関わる危険性があります。留守番時などに猫が熱中症にならないように、猫にとって快適な温度や湿度を保つ工夫や、いつでも水分補給ができる環境づくりをして、しっかり対策をしてください。
万が一、熱中症を疑うような症状が見られたら、すぐに応急処置をおこない、症状の重さに関わらず動物病院へ連絡し連れて行きましょう。