猫の白内障とは

目の診察を受けている猫
白内障は、「水晶体」という目の器官が白く濁った状態のことをいいます。

水晶体は主に水とタンパク質から構成され、正常であれば濁りのない透明な状態です。しかし、外傷や加齢、病気、遺伝などが原因でタンパク質が変質すると、水晶体に濁りが生じてしまうのです。

水晶体が完全に白くなるまでは、いつもと変わった行動が見られることは少なく、初期段階では気づかないことも。しかし、水晶体はカメラでいうレンズの働きをするため、進行すると徐々に視覚障害が表れます。また、緑内障や水晶体誘発性ブドウ膜炎などほかの目の病気を引き起こすこともあるのです。

犬と比べて、猫が白内障を発症するのは極めてまれです。しかし、白内障は失明のリスクが高く、別の病気の合併症として表れることもあるため、症状や予防法についてはしっかり覚えておきたいところです。

猫の白内障の原因

白内障になりやすい猫ペルシャ
猫の白内障の原因は、遺伝による先天性と、外傷や年齢、病気による後天性の2つに分けられます。それぞれ具体的に見ていきましょう。

外傷

猫の場合、もっとも多い原因が外傷です。ほかの猫とのけんかや事故などによって、目に異物が刺さることで水晶体が損傷し、白内障を引き起こしてしまいます。

加齢

加齢によって水晶体が変質して発症する白内障を「老年性白内障」といい、多くは6歳以上で症状が表れます。
老年性は犬に多く見られる原因ですが、猫では少ないといわれています。

病気

糖尿病の合併症として白内障を引き起こすことがあります。
血液中の糖分が高くなると、糖を代謝するための酵素が必要になります。代謝によって発生した物質が水晶体の中に残ることで、白内障の原因となるタンパク質の変性が起こるのです。

ただし、猫は糖代謝によるタンパク質の変性が起こりにくく、糖尿病によって白内障が誘発されることはごくまれです。

遺伝

2歳ぐらいまでに発症する「若年性白内障」は、遺伝が原因であることが多いとされています。
遺伝的にかかりやすいといわれるのがペルシャ、ヒマラヤン、バーマンなどの猫種です。

猫の白内障の症状

横になっている猫
猫の白内障は、症状がかなり進行するまで気が付きにくい傾向にあります。視覚障害が生じても、優れた嗅覚や聴覚でカバーできるので行動に変化が表れにくいのです。
また、白内障が片目だけに発症している場合も、もう片方の目で補えるため飼い主はなかなか気付くことができません。

愛猫の目の異変をいち早くキャッチするためには、症状を知り、しっかり観察することが大切です。

初期

判別しにくいですが、目の一部に白濁が見られます。白内障の原因が外傷の場合は目に炎症が生じて、涙や目ヤニが出ることもあるでしょう。

初期段階では、視力は大きく低下しませんが、暗い場所を嫌がる場合もあります。

中期

目が白く濁る範囲は初期より広がりますが、じっくり観察しないと気が付かない可能性があります。
視力の低下が進むことで壁や柱にぶつかる、物音に敏感になる、慎重に歩くなど行動にぎこちなさが見られます。

後期

目の白濁が、はっきり判別できるほど全体に広がります。混濁により光が遮られるため、瞳孔は常に開いた状態です。
ほとんど目が見えなくなり物にぶつかる、壁伝いに歩くなど行動の変化も顕著に認められます。

また、水晶体誘発性ブドウ膜炎や緑内障などの重い合併症を引き起こしたり、最終的には失明してしまったりすることもあります。

猫の白内障の治療法・治療費の相場

猫の白内障の治療法
白内障の治療法は2つ。初期段階でおこなう内科治療と、症状が進行していると判断された場合におこなわれる外科治療があります。

内科治療

目の白濁が一部のみで、視力の低下がほとんど認められない初期段階におこないます。
目薬や内服薬、サプリメントなどが処方されますが、白内障を治す治療ではなく、進行を遅らせることが目的です。

病院にもよりますが、通院1回あたりの平均治療費は7,000円程度です。

外科治療

内科治療では、一度濁ってしまった水晶体を元に戻すことができません。視力を回復するための根本的な治療には、手術による人工レンズの挿入が必要です。

手術は、目の白濁が広がり、視覚障害も進行している場合の治療法ですが、専門の機器や高い技術を要するため眼科専門医のもとでおこなわれます。また、事前に年齢や健康状態、目の検査をしたうえで手術が可能かどうかを判断します。

治療費は、手術費や入院費を含めると片目だけでも20~30万円前後かかります。

自宅でのケア

術後は、愛猫が目をこすらないようにエリザベスカラーをつけます。
目薬を投与したり、こまめに目ヤニを拭き取ったりと、術後の目を守るためには自宅でのケアをしっかりおこなうことも必要です。

まとめ

猫と飼い主
猫は、犬や人間と比べて白内障にかかる可能性は低い傾向にあります。しかし、遺伝的に白内障を発症しやすい猫種は注意が必要です。白内障は進行性の病気であり、最終的には失明するリスクも否定できません。症状に気付かないことが治療の遅れにつながるので、日ごろから愛猫の目の状態や行動をしっかり観察し、気になることがあれば獣医師に相談しましょう。